チップを使いこなす

レストランを食べ尽くす
チップを使いこなす
タクシーを乗りこなす
レンタカーを乗りこなす

 海外にいるときの日本人にとって、あまり馴染みのない習慣の一つとして『チップ』を上げることが出来るのではないでしょうか。なぜなら、日本人にとって「サービス=無報酬」であり「(そのサービスに)お金を渡す(貰う)=はしたない、あまりよくない、逆に相手に失礼、などなど」というような考え方が、成立しているからだと思います。
 ところが、欧米では別にサービス(奉仕)を受けた感謝の気持ちや感謝のしるしとしてお金を渡すことは、変であったり良くない行為という意味合いは全然なく、ごく自然な行為なようです。
 でもそのような習慣のない日本人にとっては、チップを、どの様なときに、どの程度の金額、渡せばよいのかが明確にわかりません。そこで、この特集では、チップのことで頭を悩ませることがなくなるように、チップの使いこなし方・コツなどをまとめてみたい思います。

どんなときにチップを渡すのか
 さて、大きく考えるとチップを渡す場面は『ホテル』『レストラン』『タクシー』と、このような場面が旅行するときにチップを渡す可能性がある場面だと思います。ここで「可能性がある場面」と書きましたけれど、ここが難しいところだと思います。上記のような場所の、どの様な場面でチップが必要になるのかをある程度把握しておかなければならないからです。ということで以下の部分で、このところを詳しく考えてみたいと思います。

その1−『ホテル』
 イタリア旅行に行けば、親類や友人知人がいない限りは、やはりホテルに泊まりますよね。それなので、先ずはこのホテルにおけるチップを使い方を紹介していきたいと思います。しかもホテルでチップを考える場面はある程度限定的なので、比較的簡単です。

ポーター
 ホテルに到着してチェックインを済ませたら、先ずは部屋に向かうでしょう。その時にある程度のクラス(四ツ星以上くらいかな)のホテルになると、ポーターが部屋の案内がてら、レセプションから部屋まで荷物を運んでくれる場合が多くなります。そのようなときは小額の紙幣でチップを渡してみても良いのではないでしょうか(別に渡さなくても全然構わないと思いますが、後述のように要は気持ちですから)。チップの額は本当に小額の紙幣(例えば、1000ITLとか2000ITLとか)でいいと思いますよ。もちろん渡すときは手渡しで、「Grazie!(グラッツェ)」という感謝の言葉(ここが重要!)と共に渡しましょう。決して、「ほら、やるよ!」なんて感じはやめましょう。当然相手も「Grazie!」と返してきますので、その時は「Prego(プレーゴ:この場合は、『どういたしまして』という意味のイタリア語)」といえばもうばっちりです。
 このGrazieとPregoのコミュニケーションは、このシチュエーション限定ではなく、以下の場合どれにでも当てはまりますので、憶えておくとなんかいいですよね。

ルームサービス
 食事、クリーニング、ベッドメイキングなどルームサービスは広範囲にわたりますが、ベッドメイキングだけはこちらから頼まなくても、勝手にやってくれます。このベッドメイキングに対するチップはどうしましょうか。毎日シーツが新しくなるわけではないからいらないのでは?でもやってくれるのだからやっぱりいるのでは?等など色々な意見があると思うので、ここはわたし流の解釈を紹介してみます。
 私はベッドメイキングに対しても小額紙幣でチップをおいています。直に手渡す機会もないので、枕の上に「ポン」と置いてきてしまいます。あるガイドによると「枕に置いたりするのは良くなく手渡しをしないのであればベッドメイキングにチップはいらない」というようなことが書いてありましたが、要は気持ちですから、私はわたし流にやりたいようにしてしまっています。特に数日間滞在するならば、このチップが「快適に過ごさせていただいていますよ」という意志表示にもなると思っています。そうすると、お互いが気持ちよくいれるのではないでしょうか。
 その他の食事等のルームサービスは、来てくれたときにチップを手渡しすればよいと思います。サービス料が含まれているならば、渡さなくても良いと思いますし、小額紙幣を渡してもどちらでも良いと思います。

その2−『レストラン』
 レストランにおけるチップは比較的簡単です。
 最初に、簡単なのでチップがいらないところを考えてみましょう。先ず、レストランでも飲食料金にサービス料が含まれているところはチップはいりません。サービス料が含まれているかいないかは、お会計の時のレシートを見ればわかりますので、忘れずにチェックしましょう。ちなみに、イタリアではレシートを渡すことが法律で決められているので、たいていはレシートを要求しなくても渡してくれるはずです。それでも自分が気持ちよければ、その感謝の印としてチップを渡すことはもちろんオーケーでしょう。
 その他にもセルフサービスのところは、チップはいりません。例えば、マクドナルドのようなファスト・フード店を利用するとき、自分の食べたいものをカウンターで注文してくるセルフサービスレストランを利用するとき、バールでもスタンディングでカフェなどを飲むとき、などはチップはいりません。
 それでは次に、チップが必要な時を考えてみましょう。先ず通常のレストランで、前に書いたように飲食料金にサービス料が含まれてないところでは、基本的にチップをおいた方がいいと思います。金額の目安は、よく飲食料金の10%くらいといわれますが、大体そんな感じでよいと思います。また飲食料金をカードで支払うときは、その時にチップも払うことが出来ます。カードで支払いをするときに、飲食料金だけが記入されており、合計金額が記入されていない場合がその時です。この様なときは、合計金額に飲食料金にチップの額を足した金額を「自分で」書き足して下さい。そして、クレジット利用明細の控え分一枚を自分で抜き取り、残りの明細をテーブルにおいておけばそれでおしまいです。このときは『自分で合計金額を書く』ことを忘れないようにしましょう。万が一相手に悪意があれば、勝手に合計金額を書き込んでしまうかもしれませんから。
 またレストラン以外でも、バールで席に着いたときにはチップが必要になりますからお忘れなく。

その3−『タクシー』
 タクシーのチップも色々なシチュエーションが考えられると思いますが、色々な情報を素にして、自分なりのタクシーでチップを渡す雛形を一度作ってしまえば、後はそれに基づいていけばいいのです。ここでは、いくつかのチップを渡す方法を紹介してみます。

チップ込みの料金を支払う
 タクシーを降りるときに、メーターに表示されている料金の約10%位のチップ込みのお金をタクシードライバーに渡してしまう。例えば、メーターの料金が「16,000ITL」だったら、17,000ITL位を始めに渡してしまうのです。この様にチップを渡すときは、料金の端数整理も頭に入れておくと、よりスマートに渡せると思います。例えばメーターの料金が「22,500ITL」を示していたならば、24,000ITLにして料金支払うといった感じですね。ちなみにこれらの例の金額やチップの額は適当に考えましたので、実際に渡すときは自分なりに考えてみると良いと思います。

チップを後で払う
 メーターの料金にチップの料金を加えて渡したいと思うときでも、丁度適当な金額を持っていなかったりしたときには、チップ込みで渡したくてもそれが出来ません(そんな事したらチップの額が多すぎたりしてしまいます)。そんなときには先ずメーター分の料金を払うつもりで、きっちりとおつりをもらい、そのおつりの中から端数額等をピックアップして10%くらいのチップを、改めて渡すと良いでしょう。
 チップ込みの料金を払わないで、いつもおつりをしっかりもらった上でチップを渡すというルールでいつも対応しても、もちろんオーケーだと思います。どちらでければいけないということではないですから。


その4−『その他の場合』
 あまり普通の場面ではないのですが、この様なときにはチップのことを頭の片隅に置いておいた方がいいような、シチュエーションをちょっと紹介してみます。

トイレ
 レンタカーを利用するときに、高速を利用される方は多いのではないでしょうか。高速にある日本でいうサービスエリアにあるトイレを利用するときに、よくトイレの入り口におばさんが座っていることがあります。そのおばさんは清掃員です。この人にチップを渡している人、いない人の比率は半々くらいですね。渡している人でも紙幣ではなくコインです。もしポケットの中によけいなコインが入っていたら、チップを渡そうというくらいの心構えで良いと思います。
 また高速道路のサービスエリア以外のトイレでも、例えば美術館あたりにもこの清掃おばさんは出現します。そのようなときも同様に考えればオーケーです。

コーディネーター・ガイド・通訳
 旅行しているときに、観光地でガイドをお願いしたり、通訳についてもらったら、よほど腹が立たない限りはチップのことを考えた方がよいと思います。最初に渡すか、最後に渡すかは、どちらでも良いと思います。料金の10〜20%位を目安にしながら検討してみると良いと思います。ただ、料金自体の額によって、「少ないなー」とか「多いなー」と思えば、自分で調節されればよいと思います。

運転手
 車を一日借り切って観光する場合があったり、リムジンサービスを受けたりする場合もあると思います。そのようなときも同様にチップを考えた方がいいでしょう。タクシーの時と似ているのですが、ちょっと違うような感じがしたので、あえて紹介してみました。


チップで大切なこと
 色々チップを考えても良い場面を紹介してみましたが、最後に紹介することが、チップを渡す上で最も大切なことです。それは、「チップは、大切なのは自分の気持ち・自分の感謝の気持ち」ということです。
 今までは、「どのようにしてチップを渡すか」という事について、紹介させていただきましたが、いつも必ずチップを払わなければいけないということはありません。「チップを払わない」という選択肢ももちろん残しておいて下さい。不快な思いをしてまでも「チップがルールだから、しょうがないからあげよう」なんて思う必要は絶対にありません。そういうときはチップなしでオーケーです。
 自分が気持ちよいと思えたときに、もしくは挨拶的な形で考えているといいのではなでしょうか。本当に大切なのは、形式や形ではなく、自分の気持ちです。
 チップには、ある程度の知識は必要だと思いますが、それが義務感のようになってしまっては、縛られた感じがして苦痛になってしまいます。大切なのは自分も気持ちよくチップを渡せて、相手も気持ちよくチップを受け取れることだと思いますよ。

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